2010年10月26日火曜日

術前説明

【病名】
病名が変わっていました。”慢性解離性大動脈瘤”だそうです。
慢性というのは、春に発症したときのように、急に症状は進まないけれど、
治りもしない、ゆっくり悪くなる状態、かと思います。
解離した部分が膨らんで、瘤(こぶ)になってしまったのですね。

【部位と状態】
今回、置換する血管の長さは、30cm程度です。
大動脈は、心臓からいったん上向きに出て、鎖骨のあたりで
下向きになりますが、その向きを変える頂点くらいから、
位置で言うとおへその上7-8cmくらいのところになります。
ヒトの体は、胸とお腹に仕切りがあって、今回は、仕切りから上、
胸の区画だけを対象にします。

大動脈置換のリスクとして、対麻痺といって、大動脈から脊髄へ
行っている血管があり、その血管をつなぎ替えると、下半身が不随になる
リスクが10%あるのですが、今回置換するエリアには含まれませんし、
鎖骨の部分で枝分かれする部分も含まないので、分岐なしのストレートな
部分の置換ということになりますので、つなぐ手数が単純な分、リスクは
下がります。

春に解離が発生したときに、もし、このような枝分かれなのないストレートな部分
ではないところで解離が発生していたたとしたら、大変なことになっていた
ということを、改めて思い起こしました。
つまり、もっと上方なら、鎖骨あたりで腕へ行く血管に影響があって
腕に不自由が残ったかったかもしれないし、
下方で解離の位置がたまたま枝分かれする血管のその部分だったら、
枝分かれの先の方に、たとえば腎臓があって、尿が出なくなるとか、
の障害があったかもしれません。
そういう合併症なしに、急性期は過ぎ仕事にも復帰できたことは、
ほんとうによかったことなんだと思います。そして、半年後に 今度は瘤に
分類されるほど破裂のリスクのある状態になっていたということです。

ゆっくりではありますが、症状は進んでおり、今なら、ストレートな部分だけの
置換で済むところ、もう半年後には、もしかすると、枝分かれしたややこしい
部分を含んで置換しなければならなくなるかもしれません。
そういう点からも、今回、できるだけ早い時期に手術を決めたことはよかった
といえます。

【術式】
心臓を止めずに行う方法もあるようですが、今回は止める方法で行ないます。
心臓を止めるにあたり、体温を20℃くらいまで下げて、行くそうです。
心臓を再び動かすときも、徐々に体温を上げていくそうで、この温度の上げ下げの
時間がかかるため、手術時間も全体で5時間程度になるとのことです。
心臓が止まっている間、人工心肺を使用しますが、人工心肺も使用しない時間
=つまり、脳に血流がない死んだのと同じ状態の時間も20-30分あります。

心臓を止めずにする術式を選択肢しなかったのは、心臓を止めまない場合は、
血管をクリップで止めて血流を止める必要があるが、ただでさえ弱っている
血管をクリップで止めるのは、血管を損傷しやすく、また、クリップすることで
血管内の血栓が剥がれてを脳や心臓の血管を詰まらせるリスクもあるからです。

古い血管は、取り出ざず、体内に置いておきます。これは意外だったのですが、
全部摘出するために剥がすのが大変で、出血も多くなり、そのまま置いておいても
害はないのでそのようにするそうです。
人工血管を取り付ける際には、古い血管に縦に切り込みを入れて、血管が
筒状になっているのをひらき、開いたところを人工血管に置き換えて、
両端を縫い合わせます。

外からののアプローチは、下から2番目と3番目の肋骨の間に骨に沿って切り込みを
入れ、いったん肋骨を切り、開いて中の方に進んで行きます。
切り開く長さは30-40cmくらいでしょうか。

肋間神経痛という病気があるとおり、そこには神経があり、また、この部位は
よく動く部分なので痛みは、他の部位に比べて長引きます。直後の痛みが
おさまるのにも3週間程度はかかりそうです。

【おまけ】
私の知的好奇心の話ですが、取り出した血管をぜひ見たい、とお願いしたところ、
上述のように、実際には血管は取り出さないので、
それはムリだということがわかりました。
なので、体を切り開いたところなどの写真をあとから見せていただけるよう、
お願いしました。

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